Buho No.216 目次

1998年秋,TSG 駒場祭展示

自作プログラムを展示するということ

ぶほ編集部


(企画参加者=理論科学グループ・メンバー一同)

理論科学グループ(TSG)とは

起源はともかく,現在はコンピュータ系サークルです。 コンピュータを趣味とする人たちが集まっています。

コンピュータを趣味とすることについて

ここ10年ほどの傾向では, 趣味のコンピュータというと,「プログラムを書く」 ということをメインに据える人がたいへん多いようです。 私たちTSGも,駒場祭では毎年,自作のコンピュータプログラムを 中心とした展示をおこなってきました。

なにしろ趣味ですから,家庭用コンピュータを使ったものが 大きなウェイトを占めます。 20年前ならば,家にマイコンがあるというだけで大騒ぎ だったのでしょうが,家庭用コンピュータを取り巻く状況は刻々と 変化しつづけていて,いまや家庭用コンピュータというモノは, かなりの層の厚さを持ちつつあります。 この3〜4年ほどの間は特に,ハードウェアの処理速度などといった 技術の進歩だけでなく, メーカー陣営の地図にもさまざまな転換がありました。 その影響は趣味プログラミングの世界にも大きく及び, 技術,経済の両面において,趣味プログラマを続けること 自体が難しくなるような,厳しい時期が続きました。 現在は,一時期ほどの高い障壁はなくなってきましたが, たとえば5年前と比べると,敷居が高い感じがします。

その一方,当然といえば当然のことですが, 家庭用コンピュータというモノの拡大につれて, プログラミングとは違った角度からコンピュータに興味を持つ人の割合が, たいへん大きくなってきました。TSGのメンバー(TSGer)の間でも, その現象は進んでいます。 プログラミングが「趣味のコンピュータ」の花形であった時代は, 確実に終わりを告げつつあるのです。

プログラムを書くことについて

しかし,私たちは依然として,「プログラムを自分で書く」ことにこだわります。 プログラムを書き,機械と直接「対話」することは,それ自体知的なゲームです。 このゲームは,以前より敷居が高くなったとはいえ, それなりのきっかけと機材さえあれば,いつでも始めることができます。 そしてその経験は,この機械ずくめの社会の中で, 理性的に機械と接するためのよい素養を与えてくれます。

今回の駒場祭でも,多くの TSGer がプログラミングに初めて挑戦しました。 企画構成上,役割分担を行ないますので,スタッフの中には 一行のコードも書かないような人も含まれますが, グラフィックデータや,ゲームのステージデータの作成作業を通して, 彼らもまた,機械との情報授受を間接的に体験しています。 プログラムを書くのと同様な,つらい試行錯誤もあったでしょう。

にもかかわらず,誰も途中でやめようとはしませんでした。 時間との戦いに敗れてしまうケースはありますが, 途上で投げ出す者は一人としていないのです。

その原動力とは,何なのでしょうか。

目指すものが完成し,見るものの評価を得た時の達成感は, 言うに及びません。 が,前に「プログラムはそれ自体がゲームだ」と述べたように, プログラムを書く過程にこそ,プログラミングの楽しみがあると思うのです。 機械との理性的対話を繰り返すうちに,実は 機械を動かすことそのものを楽しんでいる自分に気づきます。

プログラムを書くという知的な行為を通じて得られる, 生き生きとした心の動き --- 目の前にあるわけのわからない箱が 自分の言うとおりに振る舞ってくれることへの感動, どう工夫しても思い通りに動いてくれないことへの焦り, といった感情の起伏 --- を, 多くの人と共有できることを願います。


今野 俊一 (こんの, knn) <toknn@ijk.com>, <knn@ebony.plala.or.jp>
東京大学 工学部 計数工学科(内定), TSG(理論科学グループ)